医学部化学を攻略する参考書

化学の勉強方法の基本

理論化学で最も大切なのは現象の理解である。例えば電池の分野では、金属のイオン化傾向から電子が発生し、それが電流となるという流れを根本から説明できなければ応用問題に対応できない。現象の仕組みを理解しつつ演習を重ねることで、初めて応用力が育つ。

無機化学は暗記が中心だが、丸暗記では効率が悪い。元素を族ごとにまとめ、共通点や理屈を意識すれば暗記量を減らせる。例えばハロゲンは全て1価陰イオンになりやすく、有毒・有色で酸化力が強いなど共通性があるため、体系的に覚える方が効果的だ。もちろん、最終的には理解を伴いつつも反復暗記が不可欠となる。

有機化学は性質や反応を覚えると同時に、それをもとに考察する力が必要になる。ヒドロキシ基がナトリウムと反応して水素を発生させるという知識は、単純な暗記問題にも考察型の構造決定問題にも直結する。有機が「パズル」と呼ばれるのはこのためであり、パターンに慣れれば得点源になりやすい分野である。

このように、理論は理解、無機は体系的暗記、有機は知識と考察力という三本柱を意識して学習を進めることが、化学を攻略する最短の道である。

化学の参考書を使う順番

化学はどれだけ初歩からでもいいので、必ず自分のレベルに合った参考書を使いましょう。よく意識高いだけの客観性の欠如した受験生が聖書のように「化学の新研究」「化学の新演習」を愛読していますが、自分の身の丈にあってないので、時間を無駄にしているだけです。基礎学力が不十分なままレベルの高い参考書を使っても学力は向上しません。上滑りをするような勉強方法だけは必ず避けましょう。

とにかく、化学は自分の学力に合った参考書を使うことがベストです!

以下で理解度別のオススメ参考書を紹介します。偏差値はあくまで目安なので、自身の理解度に合わせて参考書を使用してください。

理解度別オススメ参考書

初学~偏差値50

初学からでも化学の偏差値は十分上げることができます。初学~偏差値50の受験生はまず基本的な「講義型+問題集」がセットの参考書から勉強を始めましょう。

宇宙一わかりやすい高校化学 理論化学 改訂版
宇宙一わかりやすい高校化学 無機化学 改訂版
宇宙一わかりやすい高校化学 有機化学 改訂版

宇宙一わかりやすい高校化学シリーズ

入門書として群を抜いて完成度が高い。初学者が「現象の流れ」を理解することに特化しており、単なる暗記ではなく「なぜそうなるのか」をイメージさせる力を持つ。特に理論化学の説明は秀逸で、抽象的な計算や概念をイラストや身近な例で噛み砕き、初学者を一気に中級レベルに引き上げる。理論化学に掲載されいる化学平衡分野は参考書史上最高傑作レベルなので、必読。たしかに受験化学としての情報量は不足しているが、基礎事項は完璧に網羅しているので、化学が苦手な受験生が「わかる感覚」を初めて掴むのに最適な一冊である。

偏差値50以上

宇宙一レベルの基本が身についた学生には、2つのルートを勧める。自分の状況に合わせて変えて欲しい。

セミナー化学で仕上げるルート

エクセル化学[総合版]

分量が膨大であり、典型問題から細かい知識確認までを網羅する「演習辞典」のような一冊。圧倒的な網羅性により丁寧に取り組めば確実に力がつく。知識を整理するパートや基礎~標準までの演習問題を行えるなど、内容の充実性が医学部受験に極めて相性が良く、正しく使えば「問題演習の底力」を徹底的に鍛えることができる。

リードlight→重要問題集ルート

改訂版 リードLightノート化学

基礎固め用の問題集として標準的な位置づけにある。問題の分量はそこそこあり、典型問題を一通り網羅しており、「一巡することで化学の全体像を俯瞰できる」設計になっている。難問や応用には踏み込まないため、これ一冊で合格点を狙うことはできない。しかし、基礎を確認し、典型パターンを早期に習得するには効率が良い。化学を初めて体系的に演習する段階で、確実に役立つ教材である。

受験化学において最も定評のある定番問題集。入試頻出の典型問題をほぼ網羅しており、掲載問題の質が極めて高い。基礎から標準、そしてやや難レベルまで階段的に積み上げられているため、真剣に取り組めばこの一冊で「実戦力の骨格」が完成する。一方で知識を整理するパートがなく、典型問題を通して知識を呼び覚ますことができても体系的な理解を作る機能は弱い(特に暗記分野)。医学部の知識問題はあの手この手で視点を変えて出題されるので、そのような問題に対応する力をつけることは難しい。暗記分野の補足用の参考書を下記に紹介する。

無機・有機を補完する参考書

典型問題で暗記系の問題が解けても、少し問われ方が変わるだけで解けないという受験生はとても多い。下記では本質的な暗記が可能な参考書を2冊紹介する。両者は知識の暗記に至る方向性が全く異なるので、自身の好きな方を選択して欲しい。

橋爪のゼロから劇的にわかる無機・有機化学の授業 改訂版 (大学受験DoStart)

橋爪のゼロから劇的にわかる無機・有機化学の授業

この本の最大の魅力は、受験に必要な知識が極めてわかりやすく整理されている点である。無駄な情報の掲載がなく、最小限の暗記で多くの知識問題に対応する力を付けることができる。問題演習を通して知識を得た受験生は、暗記した情報が整理されていないことが多く、解いたことのある問題と同じ問われ方じゃないと解けないというケースが多い。ぜひこの参考書で知識をまとめて欲しい。


大学受験Doシリーズ 福間の無機化学の講義 五訂版
大学受験Doシリーズ 鎌田の有機化学の講義 五訂版

福間の無機化学の講義/鎌田の有機化学の講義

理系として化学現象を捉えたいという受験生向き。初学者向けというより、ある程度基礎を終えた受験生が「体系化と本質理解」を求める段階で真価を発揮する参考書である。 教科書的な暗記の羅列とは異なり、無機化学を理論化学や物理化学的な視点から整理し直すスタイルを取っているため、断片的な知識が一本の線で繋がる感覚を与えてくれる。特に「なぜこの性質が成り立つのか」「どうしてこの反応が起こるのか」という因果関係に踏み込む説明は、他の無機参考書にはない圧倒的な特徴である。 ただし、その分内容は高度で、化学が苦手な層が安易に手を出すと消化不良を起こしやすい。演習要素も乏しいため、必ず典型問題集と組み合わせて使う必要がある。 結論として、「無機を暗記から理解へ昇華させたい上級志望者にとっての最強の武器」と言えるだろう。

「化学の新研究」「化学の新演習」はやめとけ

受験化学の参考書を探すと、必ずといっていいほど名前が挙がるのが 『化学の新演習』 と 『化学の新研究』 である。難関大受験生や予備校の一部指導者が「最高峰の参考書」と評することも多く、特に理系のトップ層が手に取りたがる定番である。しかし断言しておこう。大学受験生にこの二冊は必要ない。むしろ多くの場合、害悪にすらなり得る。

出題範囲を超えた難易度

『化学の新演習』に収録されている問題は、入試標準を大きく逸脱したものが少なくない。確かに思考力を試す問題として優れてはいるが、入試現場でそのレベルまで要求されることは稀である。大学受験の合否を分けるのは、難問奇問の処理ではなく、典型問題を確実に落とさない力である。実戦的に考えれば、「セミナー化学」を完璧に仕上げた時点で十分に合格圏に到達できるのだ。

膨大な時間コスト

この二冊を真剣にやり込もうとすると、膨大な時間を消費する。『新演習』の難問を解き切るまでに何時間も費やせば、その分だけ英語・数学・物理といった他教科の学習時間が削られていく。受験とは総合点の勝負であり、化学だけに偏重する学習は極めて非効率である。「やり切れなかった」まま挫折する受験生がほとんどであるのも頷ける。

「深すぎる知識」が逆に混乱を招く

『化学の新研究』はもはや受験参考書ではなく大学の専門書に近い。もちろん読めば面白いし、知識は豊富に得られる。しかし受験生にとっては「知りすぎること」が逆にマイナスになる。例えば、大学レベルの細かい例外や特殊な実験知識を学んでしまい、本来必要のない情報に頭を占領されてしまう。入試問題で問われるのは、深い学術知識ではなく「高校化学を正確に理解した上での思考力」である。

「参考書マニア」への落とし穴

難関参考書を所有していることが安心感につながる受験生は多い。しかし、手元に置いたことで満足してしまい、肝心の典型問題集や基礎演習を徹底しないまま進んでしまうのは本末転倒である。受験化学で最も重要なのは、基礎から標準問題を確実に得点源に変える力だ。『新演習』『新研究』に手を出すより、その時間で「セミナー化学」を三周し、「橋爪のゼロから劇的にわかる」で知識を整理した方がはるかに合格に直結する。

-未分類