物理の特徴と勉強方法
勉強方法を学ぶ上で、まずはその科目の特徴を知る必要があります。そもそも受験物理とは、現実世界で発生している物理現象をもとに体系化された物理学を、高校物理学というものに区分し、その内容から出題されるものです。つまるところ、実験の結果我々の生きる世界ではこういう法則があることが分かったから、その法則を使って問題にしてみた!といったところです。
この受験物理の最大の特徴は問題の解き方を理解していないと問題が解けないところにあります。「解き方を理解しないと問題が解けない」ことは物理の最も大切な点であり、合格する受験生と合格できない受験生を分ける最大のポイントでもあります。ドップラー効果の問題を通して、解き方を理解する重要性と物理の勉強方法を説明いたします。
注意!そこそこ解ける受験生が一番危険!
ここからは、物理を勉強している人には注意してほしいポイントを詳しく説明します。
物理はどんなに勉強をしても、本質の内容を理解しないと成績が伸びない科目です。受験界にはどんなに勉強してもなかなか物理の成績が伸びないひとがたくさんいますが、その根本的な原因は物理の解き方を暗記しているだけだからです。
しかしタチの悪いことに、教科書レベルの基本的な問題や典型問題は公式やその解き方を覚えていれば解けてしまいます。模試は学生の基礎学力をはかるために典型問題がよく出題されますが、そこそこ勉強をし計算ミスをあまりしない受験生であれば、模試の問題ならばまあまあ解けてしまうのです。このまあまあで偏差値60前後をさまよっている受験生は要注意です。
この状態は本人からすると、特に物理ができないという考えはなく、そこそこ物理に自信もあるので、本人は今の状況がまずいという自覚がないため非常に危険です。前述したように物理は本質の理解をしないと伸びないため、まずは本人が自身の勉強法が悪いと自覚しないことには、成績向上は望めません。要するに、人は失敗したとき、その失敗に対して反省し、改善策を模索し、それを実行することで進歩しますが、そもそも失敗をしている自覚がないので、何も変わりません。物理は暗記科目と違って闇雲に勉強しても無駄なので、ただ時間だけを浪費していくことになります。
それでも偏差値60程度あれば十分じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、医学部を目指す以上、公式の暗記だけで物理を乗り越えるのはかなり厳しいと思ってください。勉強しても物理が伸びない受験生は、ただちに自身の勉強方法を見直しましょう。これから物理の勉強を始める人は、物理現象の理解と使用する公式の理屈を常に考えながら、本質の理解を第一に勉強を進めましょう。
医学部物理の特徴とそれぞれの攻略方法
医学部物理の特徴は、正直一概に言えません。本当に学校によって難易度・合格に求められる能力が違うのです。大きく分けて4つのパターンがあるので説明していきます。
短時間で多くのの典型問題を解かせるパターン
私立下位~中堅でよくみられるパターンです。問題一問一問は簡単でも、試験時間に対して明らかに問題量が多く、計算量も半端じゃないです。この形式の注意点としては、典型問題だから解ける!と考えて、気づいたら一問に時間をかけすぎてしまうことです。医学部入試では物理・化学で合わせて120分にすることがあるので、物理に時間をかけすぎると化学の時間が取れなくなります。
この形式の受験校で求められる能力は、典型問題を瞬時に解く能力、計算速度、解くべき問題を見極める能力、計算ミスをしない能力です。特に計算ミスと解くべき問題を見極めることは本当に大切です。時間をかけずに飛ばした一問による失点と、時間をかけて解いた問題を計算ミスで落とした失点では本質が違います。なぜなら、飛ばした問題の損失はその問題の失点だけですみますが、時間をかけた問題の損失は時間+失点になるからです。また、解くべき問題を選別することも大切です。5分で解ける一問と20分かかる一問ではどちらを解くべきでしょうか。試験本番は少しでもいい点を取ろうとして視野が狭くなるので、解けそうな問題ならなんでも解きたくなってしまいますが、仮に問題を解けたとしても時間を使いすぎれば当然不合格になります。解けそうな問題でも捨てる勇気をもつことが重要です。
攻略方法は、できるだけ正確に素早く解き、解くべき問題をその都度見極めるだけです。シンプル故に単純な計算能力や頭の回転の速さ、ミスをしない正確さで差が付きます。しかし、この形式の大学では思考力や応用力、物理学への理解はいらないため、受験問題を解く技術が高い人は受かりやすいです。
代表大学:東京医科大学、日本大学N方式など
標準問題だけで構成された王道パターン
地方・中堅国立医学部や一部の私立大学でみられるパターンです。一般的な受験物理とほとんど変わらない問題量・難易度で構成されています。標準問題が多いため理解度によって差がつく問題が多く、受験層のレベルが高い医学部では高得点勝負になりがちです。
この形式の受験校で求められる能力は、計算能力、物理学の本質をある程度理解していることです。思考力や応用力、物理学への深い理解はそこまで求められるわけではありませんが、多少は差がつくポイントになります。
攻略方法としては、標準的な問題をどれだけ安定して取れるかという物理の完成度を磨くことにあります。当然裏技のような攻略法はないので、しっかりと勉強した人とそうでない人で大きく差が付きます。
代表大学:地方・中堅国立大学、大阪医科、昭和大学など
医学部特有の癖の強い問題で構成されたパターン
下位~上位までの私立大学でみられるパターンです。とにかく癖が強く、問題のよっては大学の知識が必要なものもあります。奇問や悪問が多いので、そのような問題では差がつかず、奇問に隠れた標準的な知識で解ける問題で差がつくことが多いです。
この形式で求められるのは、物理学へのある程度の理解、思考力や応用力、そして読解力です。読解力とはどういうことだろうか?と考えるひともいると思いますが、実はこのパターンの大学ではとても大切な能力となります。奇問や悪問には出題者が何を求めているかよくわからない問題が多く、出題者の意図を問題分から読み解く力が大事だったりもします。
攻略法としては、出題者の意図を考え、学んできた物理学の知識でどうやって解くのか常に思考することです。また、解けそうな問題を探してその問題は絶対に解ききることも大切です。
代表大学:東京慈恵会医科大学
シンプルな難問で構成されたパターン
上位の私立大学、国立大学でみられるパターンです。シンプルな難問が多く、生半可の理解では太刀打ちできません。
この形式で求められるのは、物理学への深い理解、思考力や応用力、理数系のセンスです。理数系のセンスとは、空間能力や数学的な理解など理数系の分野全般におけるセンスのことです。このレベルの難問になると物理学的な能力ではなく、数学的な能力も必要となるので、理数系的な思考センスが求められるということです。
攻略法としては、物理学を深く理解すること、そしてもって生まれたセンスで解くことです。このレベルの問題で求められる思考力は、努力だけではどうにもならないところもあるので、地頭が重要なことは否定できません。
代表大学:旧帝国大学、慶応義塾大学など
最後に
これまでのまとめになります。
- 物理の勉強は、物理現象の理解と公式の理解を念頭に、本質的な理解をしながら進めましょう。
- 大学の出題傾向によって求められる能力が違うので、過去問演習を通して自分に相性の良い大学を見つけ、大学ごとに対策しましょう。