英語学習の特徴
英語の特徴は、分野と呼ばれるものがないことです。
物理には「力学や波動」、化学は「理論・無機・有機」、生物は「生命現象・生態」などの分野があり、数学も「数列とベクトル」ではほとんど独立した別の分野です。一方で英語においては、単語・熟語・文法・語法・構文・解釈などのあらゆる知識と長文読解における技術が有機的につながることで、はじめて問題を解くことができます。
他の科目はある分野を勉強すればその分野ですぐに結果を出せるのに対して、英語は単語だけを勉強しても成績がすぐに伸びるわけではないのです。加えて、単語・熟語・文法・語法で覚えなければならない知識が膨大であるため、成績を伸ばすことに時間がかかります(一般的に大学受験の英語の成績向上を実感するには、最短でも半年程度かかると言わています)。それゆえに、英語の成績を伸ばすには、忍耐力が必要です。
単語・熟語と文法が基本であり、この二つの完成度で決まる
残念ながら英語には裏技のようなものはなく、地道な努力を続けるしか成績を伸ばす方法はありません。英語学習に必要なものは複数ありますが、結局のところは単語・熟語と文法の完成度につきます。以下では、単語・熟語、文法を学習する際の正しい勉強方法について説明します。
単語・熟語
単語・熟語の完成度は「語彙の量」「語彙の質」「和訳速度」の3つが重要となります。
「語彙の量」は、シンプルにどれだけ単語を知っているかです。また、一つの単語でどれだけの訳し方があるのかを知っておくことも語彙の量には重要です。「right」という単語は「右」「権利」「善」という名詞と、「正しい」「適切」という形容詞、「正しく」「すぐに」という副詞の意味があり、一つの単語に一つの意味だと、医学部レベルでは不十分です。
「語彙の質」は、一つの語彙の用法をどれだけ理解しているかです。例えば、「advice」という名詞は「忠告」という意味ですが、この単語が不可算名詞か可算名詞のどちらか知っていますか?「cheap」は「安い」という意味の形容詞ですが、これは「(品物)が安い」という意味で用いられ、「(給料が)安い」という意味では「low」という形容詞を用います。このように、語彙における適切な用法をどれだけ深く知っているかが、医学部受験では合否の差となることが多いです。
「和訳速度」はシンプルに単語を英語→日本語に変えるスピードのことです。英語で長文を読むのに時間がかかる理由のほとんどは、単純にこの変換速度が遅いだけです。例えば、「cat」「dog」「apple」を訳す問題があればほとんどの人は0.1秒もかからずに脳内で訳せます。しかし、「import」「cell」「compare」という単語を見て上記と同じスピードで訳せるでしょうか?これらの単語は全て単語帳では基本の単語として掲載されていますが、知っていてもcat並みのスピードで訳せる受験生は少ないでしょう。一つの単語の訳を思い出すのに平均で1~3秒かかれば、1000語の長文では1000~3000秒、実に約16分~30分のロスです。極端な例ですが、読むのが遅い人は大体このパターンで時間が足りなくなります。問題量に対して試験時間が少ない医学部の英語では、この単語一つ一つの和訳速度が命といっても過言ではありません。
以上の3つの内容をどこまで深めて単語・熟語の勉強をするかが高い英語力を養うためのカギとなります。これらに注意して勉強するために、下記の勉強方法を取り入れてください。
- 単語の量を増やすためには、様々な単語を覚えるのはもちろんのこと、一つの単語で複数の意味を覚えたり、また関連する類義語やある単語のそれぞれの品詞での意味も暗記することで語彙を増やしましょう。
- 語彙の用法を深めるには、普段の文法問題や長文で使われる単語を意識的に学ぶしかありません。まずは文法参考書にある品詞の用法を学習してください。そして、単語それぞれに適した使い方があることを理解し、長文読解を通して自身の知っている単語が生きた英文の中でどのように使われているのかを学びましょう。
- 英語→日本語に変えるスピードはとにかく単語帳で反復練習するしかないです。そのときに必ずアウトプットしながら覚えていくようにしましょう。日本語の意味を隠し、英単語だけみてその単語の訳が「apple」→「りんご」レベルのスピードで頭に浮かぶようになるまで繰り返しましょう。
文法
文法には、「文法問題のための文法」と「読解のための文法」の二つがあります。
「文法問題のための文法」とは、読解する上で重要な知識だけではなく、あくまで文法問題を解くために必要となるような文法知識も含まれています。一方で後者の「読解のための文法」は、文法問題のマニアックな知識ではなく、文章を精読したり、構文を解釈するための文法知識のことです。両者の違いをこれから説明します。
文法問題のための文法
Let’s meet at the station ( ) the afternoon of May 19.
①at ②in ③on ④for
この問題、意外と難しいのではないでしょうか。「午後に」といえば「in the afternoon」と覚えていると思いますが、実は答えは③onになります。May 19 (5月19日)のように「特定の午後」を表現するときは、inではなくonを使います。
しかし、こんなことを知らなくてもぶっちゃけ「Let’s meet at the station on the afternoon of May 19.」と文の中で出てきたら「5月19日の午後にその駅で会おう」と誰でも訳せます。だってそれ以外の訳し方はないでしょうから。つまり、典型的な「文法問題のための文法」であり、「読解のための文法」とは言えませんね。
読解のための文法
Make America great again.
こちらはトランプ元大統領のセリフとして有名ですが、文法を理解した上で訳すことができるでしょうか。
このmakeは、「S make O C」で「SはOをCにする」という文型をとります。「make O」で「Oを作る」という中学生の時に習った訳し方をしていては、一生訳すことができません。逆にmakeの文型を知っていれば、「アメリカを再び偉大にする」と訳せますね。
文法の勉強には、上記のように英文を訳すために必要な知識を勉強する「読解のための文法」という側面もあります。単語ばかりを勉強して、基本的な文法がわかっていないために、英文を正しく訳すことができない受験生は意外と多いです。
上記の「文法問題のための文法」と「読解のための文法」はどちらも大切です。私たちは日本人ですので、英文法の理解なしに正しく英語を認識することはできません。しかし、なまじ英語のセンスがあるが故に、雰囲気だけで英語を読めてしまい、結果として文法の勉強を疎かにしてしまう受験生はとても多いです。そういう受験生の多くは「難易度の高い英文が読めない」「どんなに勉強しても偏差値が60から上がらない」という問題を抱えることが多く、ある程度の所で伸び悩んでしまいます。そこで自身の問題に気づければいいのですが、大体は自分の能力を過信し、触角を取られた蟻のように迷走し、何浪も繰り返す医学部受験生がなんと多いことか…。医学部を目指す受験生は、正しい勉強をして成績を伸ばしましょう。
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医学部受験における英語の重要性
英語は膨大な量を暗記しなければならない暗記科目であり、ごまかしのきかない科目です。よって英語が苦手な受験生は、合格点より下の点数を常に取り続けることになり、これは受験において相当な不利となります。一方で、医学部は全科目で問題数に対して試験時間が短いことが多く、理数系では高得点を取ることが難しいのです。多くの医学部受験生を見ていると、実は数学よりも英語が得意なタイプの方が圧倒的に合格しやすく、その理由はまさにここにあります。
単語と熟語の完成度、文法の理解度を正しく向上させ、合格に近づきましょう。英語には裏技も裏道もありません。